佐賀の米

 タイ人は米を食べます。日本人も米を食べます。しかしタイ米と日本米は品種が異なります。タイ米は粒が細長く、炊いた後もベタつかず、サラッとしています。食べるときも、スプーンを使って皿から一口ずつすくって食べます。昔は手で食べていました。

 一方、日本の米は粒が丸く、炊いた後はネバネバしてくっつきやすいです。お茶碗を使って、お箸で食べます。くっつきやすいので、おにぎりのように握ってかたまりにして食べることも出来ます。

 子供の頃(何十年も前です)を思い起こすと、その頃、タイでは日本食がまだあまり普及していませんでした。マンガの中でおにぎりを食べるシーンがあったのですが、とても美味しそうに見えたものです。その頃はまだ本物の日本のおにぎりを見たことがありませんでした。それでも食べて見たかったので、家の炊飯器にあったごはんを使っておにぎりを作ってみたことがありました。

 米はもちろんタイ米です。なんとか頑張ってみたのですが、どうしてもマンガに出てきたおにぎりのようにはなりません。「おにぎりってどんなもの?」という疑問を長年持ち続けて来たのですが、最終的にその疑問が晴れました。米には沢山の種類や品種があり、タイ米と日本米は、同じ米とは言っても品種が異なることを知りました。
 では「どっちの米の方が美味しいか?」と聞かれたら、「美味しさの質が違う」と答えます。日本米は日本料理と一緒に食べると美味しいです。タイ米もタイ料理と一緒に食べると美味しいです。しかし日本に来て、ときどき日本米をタイ料理と一緒に食べるのですが、これはこれでまた美味しいということを知りました。

 

若木に引っ越して来て間もない頃、家で炊くごはんは近所の直売所で買っていました。樹齢3000年の楠がある、大楠公園の直売所です。ここで売っているお米は水車米と言って、大きな水車を回して精米したものです。現代風に機械を使ってするのではなく、古来からの伝統技術を使っているのです。

 

 ここの米は炊いて食べると、本当に美味しいです。水車を回して、長い時間をかけて精米するので、機械を使ったときのように米が熱くならず、美味しさが保たれるのです。水車米の価格は、1キロ当たり500円。5キロで2500円です。看板には、水車米は「さがびより」という品種の米を使っていると書いてあります。

 
 日本では、各県ごとに品種改良を重ね、人気を集めている米があります。さがびよりは2009年に誕生した佐賀の米です。特徴は粒が大きく、精米後も真っ白にはならないこと。長さ5.2mm、幅2.9mm。粘り気、歯ごたえがあり、味は甘く、香りがあります。炊きたてはもちろん美味しいのですが、冷めてもまだ美味しい。米の評価でも7年連続Aランクを獲得しています。

 もし、さがびよりの新米を食べてみたい場合は、10月上旬の刈り入れ時期以降がオススメです。今年の秋、私はさがびよりの水車米の新米を炊いて食べてみました。とても美味しいですよ。柔らかく、それでいて歯ごたえがあります。さがびよりのおにぎりも作ってみました。手の大きさに合った、三角のおにぎりです。佐賀海苔も巻いて食べると、ますます美味しいです。パリパリの海苔を食べると、中から白いごはんが顔を出します。何の味付けもしなくても、それだけで十分に美味しいです。寒いときは、美味しいごはんをお腹いっぱい食べる。それだけで幸せです。



名前:ノイ
出身:タイ バンコク
日本人の夫と息子と一緒に、佐賀県武雄市若木町で子育て中。
タイにいたときはアート・出版関係で働いていていました。
九州通訳特区ガイドの資格(タイ語)を持っています。